連合 古賀会長

毎年春闘の始まりを告げる連合と経団連の懇談会が行われました。新聞各紙は、古賀会長と御手洗会長の発言を引用し双方の主張がかみ合っていないと指摘しています。しかし、一方で、我々連合が訴えている「デフレの深刻化につながりかねない賃金抑制が引き起こす景気への悪循環をどう克服していくか」について労使での議論を期待する論調が勝っている感があります。


すでに今年の連合白書を見てご存じの方も多いと思いますが、賃金水準の平均は98年の月46.5万円から08年の43万円と7.6%下落し、年収も98年の655万円から08年は556万円と約100万円減少しています。その結果、貯蓄率は90年の15%弱から07年には2.2%まで下落しました。欧州主要国の平均が10%程度であることを考えると、これまでの世界的にも貯蓄への志向が強い日本人という印象からほど遠い実情に様変わりしています。このような変化の背景には、「行き過ぎた価格競争」があることは議論の余地がありません。バブル崩壊後の失われた10年を経て、国内需要の伸びが期待できなかった企業は海外需要を頼りに積極的なグローバル化を進め、世界市場での過当競争によりコスト削減を余儀なくされました。利益を度外視した競争は製品単価の下落を促し、利益維持にはこれまで以上の売上が必要となり、その売上増には更なるコスト削減が求められ、たとえ生産性が上がっても労働者に還元しない事態が継続してしまいました。その結果、賃金により家計に配分される所得の一部が製品の値下げや株主配当、内部留保に使われ、賃金が上がらず、個人消費が減少し、市場が縮小し、ひいては企業の利益が減少しました。そして、企業が生き残りをかけて更なるコスト低減を図ることが、更なる需要の低下、市場の縮小を促す悪循環につながっているのです。


こうした状況の今こそ、「自分たちの企業さえ生き延びれば」ということでなく、企業内労使を越えたマクロの視点が重要であり、協力原理が活かされる社会への転換に向けた労使での議論が不可欠だと思います。その際には、これまで日本の競争力の源泉であった、「生産性三原則」(雇用の安定・確保、労使協議の原則、公正な分配)に代表される労使の信頼関係の重要性を互いに見つめなおし、中長期的な企業の発展、長期雇用や安定した賃金など社会的な責任を含めた日本型の労使合意を再構築することが求められていると思います。このような大きな視点を忘れず、今この瞬間も懸命に働く組合員の皆さんをはじめとしたすべての労働者・勤労者のために、ともに頑張りましょう。




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